雪組『ファントム』、幸いなことに1回観られました。
素晴らしい出来で、「そりゃチケット手に入らないわ」と思うほど。
ファントムは2011年に蘭寿とむさんの花組版を見て以来なのですが、
「ファントムってこんなに悲しい話なの?」と思ってしまいました。
ファントムという悲劇
7年前に劇場で見て、その後たぶんスカイステージで何回か見たはずですが、
記憶が残っていなくて「こんなセリフあったっけ?」と思いながら観ました。
何より蘭寿さんのエリックとだいもんのエリックが違っていて、
蘭寿さんのエリックはところどころ面白かったのですが、
(この受け取り方が間違っていたことも今回わかる)
だいもんのエリックはひたすら気の毒かつ危険な人物でした。
ファントムって主要登場人物それぞれに瑕疵があって、
そこが埋まらないまま最悪の結末を迎えてしまうんですね。
中でもキャリエールがひどすぎます。
「なんであんたが被害者みたいな顔してんねん」と突っ込みたくなりますし、
エリックとの親子ソングも白々すぎるだろうと思ってしまいます。
しかし、最後にエリックと沈んでいくのを見ると、
「あれ、やっぱりエリックを愛していたのかな?」
と許してしまうような、不思議な役だと思いました。
トップコンビの力量
『ひかりふる路』と『SUPER VOYAGER』を劇場で見て、
だいもんときほちゃんのすごさはすでにわかっていたはずでした。
しかし今回、さらにそれを上回るパフォーマンスを見せてくれました。
ファントムの曲はところどころコミカルに聞こえてしまうのですが、
(例:「たとえこの地の果てまでも限りなく求め続ける」が
ぼくドラえもんの「奇妙奇天烈摩訶不思議~」に聞こえる)
だいもんの歌がすごく上手かったため気にならず、
「上手い人が歌うとこう聞こえるのだな」と思いました。
クリスティーヌが歌が上手いという設定も、
ここまで上手いと「そりゃスカウトされるわ」と説得力抜群です。
エリックがその歌声に執着したくなる気持ちもわかります。
記憶の中の母親の声が本質以上に美化されて、
クリスティーヌの声になっていたのだろうなと思いました。
ファントムと妖怪ウォッチ
今回ファントムを見て思ったのは、妖怪ウォッチのことでした。
妖怪ウォッチでは我々の暮らす世界に重なる形で妖怪次元があるという設定です。
主人公ケータは妖怪ウォッチというアイテムを使って妖怪が見えるようになります。
ファントムの地下室や従者の姿も妖怪次元みたいなもので、
そのせいで見える人と見えない人がいるのかな?という気がしました。
フィリップが地下室に行けなかったと言っていたのも、
フィリップはそちらの世界に踏み込めない存在だということでしょう。
エリックは人間次元と妖怪次元の間に生まれたような人物で、
仮面をつけることで人間次元の者になれるとか、いろいろと想像しました。
お知らせ
わたしの小説家デビュー作『成瀬は天下を取りにいく』が新潮社から3/17に発売されます!滋賀県大津市が舞台の作品で、西武大津店やミシガンが登場します。
読んでいただけるとうれしいです。