前回の感想ではメリーベルのすばらしさに触れましたが、
全体を通して娘役の印象が強かったです。
ここまでぴったりくる娘役が揃っていたからこそ、
いまの花組で『ポーの一族』が上演できたのだと思いました。
ゆきちゃんシーラ
原作のシーラはそれほど出番が多くありません。
「娘役トップ仕様で出番を増やすのかな?」と思ったのですが、
れいちゃんアランをみりおエドガーの相手役に据えていて、
『ベルサイユのばら オスカル編』のロザリーや、
『風と共に去りぬ』のメラニー的役割のように感じました。
でもゆきちゃんが娘役トップということはすぐにわかると思います。
邪馬台国のときにも思ったのですが、声がすごくいいんですよね。
わたしが声に惹かれた娘役は野々すみ花さん以来です。
そしてなにより歌が上手い!
ずっと聞いていたいような心地よい歌声です。
「見た目の年齢が近くて母親として見てもらえない」
とエドガーが悪態をついていましたが、
ゆきちゃんシーラはじゅうぶんお母さんに見えました。
年齢は若く見えるものの、慈愛に満ちた存在なんですよね。
むしろそのことをわかったうえで、
「エドガーがシーラを困らせるために駄々をこねているのだろう」
という感じも伝わってました。
べーちゃんジェイン
花組におけるべーちゃんの存在がうらやましすぎます。
月組だったらすーちゃんがやるかもしれない役です。
さすがにいまのすーちゃんはないかもしれませんが、
スカピンでも1789でも主人公の親友役だったので、
下手したらすーちゃんあるな……と、関係ないことを思ってしまいました。
原作のジェインを忠実に再現しようとすると、
地味で暗いキャラクターになりそうですが、
べーちゃんが演じると清楚なかわいらしさが際立ちますね。
メリーベルを守ろうとするところがすごくよかったです。
普段ジェインがあんな大声を出すことはなかったんだろうなと思うと、
胸が痛くなりました。
ほかの娘役
原作には登場しない、ブラヴァツキー役の芽吹幸奈さん。
実在する霊能力者なんですね。
「怪演」という言葉がぴったりくるような存在でした。
この人を登場させたことで、ストーリーがわかりやすくなりました。
これを良しとするかどうかは賛否が分かれそうなところです。
わたしはそれほど不自然に感じませんでした。
マーゴット役の城妃美伶さん。
原作そのままの高飛車なお嬢様という感じ。
原作と同じセリフを言うところは、いい意味でムカつく演技でした。
ディリー役の音くり寿さん。
原作ではちょっと出てくるだけですが、
バンパネラとなったエドガーにとって重要な存在です。
宝塚版でもその点がしっかり再現されていたと思います。
これだけ層の厚い花組娘役の中で、
メリーベルに華優希さんを抜擢した点もすごいと思いました。
あと、「月組はお姉さんたちが元気すぎて若手娘役が目立たない」
みたいなことをたびたび書いていますが、
なっちゃんとさち花ちゃんの顔が目立つだけのような気がしてきました。
次回月組公演で確かめてきたいです。
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