花組『CASANOVA』見てきました。
「手放しで褒めるのは難しいが、決してつまらなくはない」
というのが率直な感想です。
花組ファンなら楽しく見られるんじゃないかと思います。
ストーリーの薄さが気になる
ひとことで言うと、ジプシー男爵を2時間半見せられた感じでした。
ジプシー男爵は月組が2010年に上演した作品です。
面白いようなつまらないような微妙な話だけれど、
曲はいいし見せ場もあるし悪くはないよね、という印象。
しかしジプシー男爵は1時間35分で終わったのに対し、
『CASANOVA』は一本物で2時間半あるわけです。
途中ちょっと退屈な時間がありました。
生田先生は「お客様があまり考えずに楽しめるように」と言っていて、
たしかにそこはクリアしているような気もしますが、
最後の投げっぷりがどうも納得しかねます。
カーニヴァルをフィナーレにするというのも悪くはないのですが、
二人の別れのシーンもちゃんと描いてほしかった~というところ。
本編とは全然関係ありませんが、フィナーレの男役群舞のとき、
両端のスクリーンに流れていた「CASANOVA」の文字が、
Windows95のスクリーンセーバーみたいでシュールでした。
たぶん皆さん男役に夢中でスクリーンセーバーは見ていないと思います。
階段降りのときにも流れていました。
びっくりしたのがベアトリーチェのネックレスが回収されなかったことです。
わたしが見逃しただけ?と思ってTwitterで検索したところ、
同じように突っ込んでいた人がいました。
絶対に回収しなければならないわけではないのですが……気になりますね。
カサノヴァはプレイボーイなのか?
個人的な感想として、カサノヴァがあまりプレイボーイに見えませんでした。
これまでたくさんの女性を虜にしてきたというエピソードはあるのですが、
それがうまいこと現在進行形で反映されていなかった気がします。
女性たちがカサノヴァをキャーキャー取り囲むシーンは、
妖怪ウォッチのイケメン犬みたいでした。
(それが魔術なのかもしれない)
決してみりおが悪いわけではありません。
カサノヴァという人物の書き込みが足りなくて、
稀代のプレイボーイとしての説得力が欠けているように感じました。
ちなつとれいちゃんが最高だった
飛び抜けて印象的だったのがちなつのコンデュルメル夫人です。
仮面舞踏会でれいちゃんと踊っているところ、
仮面夫婦としてのふたりの感情がバチバチぶつかりあっているようで、
見ていて変なため息が漏れてしまいました。
れいちゃんもかっこよかったですね。
こういう人物を描くほうが得意なんだろうなと思いました。
コンデュルメル夫人の忠実な僕たちの役に立たなそうなところが、
「ヒミツのここたま」のキャラクターみたいでした。
食いしん坊キャラはモグタンみたいです。
コンデュルメル夫人とベネラの「ごはん抜き」のくだりは、
エリザベートの「取ったことあるのね、大司教様?」「ちょっと」
と同じぐらいすべっていると思いました。
楽しかったけど一回でいいかな
ストーリーの粗は目につくものの、それぞれのシーンは楽しいですし、
ドーヴ・アチア氏の曲もいいので、悪くはありませんでした。
月組の『All for One』っぽいな、とも思いました。
わたしはあの作品を中途半端なコメディだと思っているのですが、
月組ファンとしては十分楽しめる作品だったので、
『CASANOVA』も花組ファンなら楽しいところが多いと思います。
仮に生田先生がこれから重鎮になっていくとして、
30年後ぐらいに「はじめての一本物を見た」と自慢できるかもしれません。
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